2020年5月23日土曜日

メロディオン「A-32」の修理をしました

50年ほど前に作られたメロディオンを分解・修理してみた記事で御座います。


札幌ゲー音部には様々な楽器の奏者がいます。
ギター、ベース、ドラムといったバンドサウンドの必須楽器はもちろん、バイオリン、ウインドシンセ、更にはフィンランドの民族楽器であるカンテレや、鼻笛もしばしば用いられます。

とりわけ鍵盤奏者が多く、セッションにおいて鍵盤ハーモニカの登場機会は頻繁にあるといえます。

鍵盤ハーモニカといえば教育楽器としての利用が一般的です。
これは1968年に学校向けの学習指導要領が改訂された際、新たに設けられた「基礎」領域において鍵盤ハーモニカの利用が含まれたためです。

その背景には「鍵盤を押す行為と音階、息の強弱と音の強弱といった相関関係を把握しやすい」「和音を出せるため合奏におけるリズム隊という概念を生み出せる」といった教育上の理由や、「児童数の増加によって音楽の授業を一般教室でやらざるを得ず、各児童個人が楽器を持つ必要が生じた」のような事情があった、と言われています。

とはいえ鍵盤ハーモニカ自体はドイツのホーナー社が1957年に発明した楽器であり、そもそも大衆音楽シーンでの利用を想定されて作られたものです。

これらをまとめると鍵盤ハーモニカは、小型・軽量で運搬しやすく、発音が容易であり、しかも様々な音楽ジャンルに合う楽器だと言え、ゲーム音楽演奏集団である我々にも必然愛好者が多いわけです。

長くなりました。

で、この自粛状況の情勢のなかでちょっと楽器のメンテナンスをしようかなと。
引っ張り出してきたのが鈴木楽器のメロディオン「A-32」です。


ちょっと見慣れない形に見えます?
1967年発行モデルです(厳密には1967~1973年まで製造されており、写真の現物の製造年は不明です)。
現在、教育楽器としての鍵盤ハーモニカは32鍵盤が主流ですが、その鍵盤数のメロディオンとしては第一号モデルにあたります。

ちなみに「メロディオン」とは商標名であり、楽器名としては「鍵盤ハーモニカ」です。
ヤマハのピアニカをメロディオンと呼んだりその逆で呼ぶことは、メガドライブもプレステもピピンアットマークも全部「ファミコン」と呼ぶようなものなんですが、最早ほとんどの方はこの記事を序文から読み飛ばしていると思われるので、そういったあれこれはとりあえず良いです。

で、このA-32。高音部の「ソ」と「シ」の音が鳴りません。
中古で手に入れた時点で壊れていました。
鍵盤ハーモニカはご存知の通り、息を吹き込みながら鍵盤を押すと音が鳴りますが、押した手ごたえはすれどなんら音は出ず。

いい機会ですので分解することにします。
まずこのモデルはガワのカバーに2か所ずつ、計4か所がネジ留めされています。


この部分を外すとガワが取れるようになるので、カバー部を横にスライドさせていき、本体を抜き出します。


カバーは固いですが、力を入れると若干拡がるため問題なく抜き出すことができます。


さて、本体を裏返した様子がこちらです。

これ、完全に現在のモデルとは構造が違っているはずです。
調査不足ですが、1973年のモデルチェンジ時か遅くとも1986年のMA-32発売時には、単一の板に穴を塞ぐ金属の細い歯のようなものが並んでいる構造になっていると思われます。

このA-32においては、鍵盤を押すことによって接続されたレバーが浮き上がり、更にレバーの先についた黒いコマが連動して上がるような仕組みになっています。


鳴らない「ソ」と「シ」についてはレバーと黒いコマが剥離しているので、そこで動作が途絶しているわけです。
これによって何が起こるかというと……


この黒いコマをズラしてみると、下に穴が開いています。
黒いコマが正常に浮き上がってくれれば、その鍵盤の穴が解放されて対応する音が鳴るようになっています。
しかしレバーを上げてもコマが浮かず穴は塞がれたままなので、鳴らない、ということです。


こうなると問題は簡単です。
使うのはホームセンターで売っている200円程度の一般的な接着剤(金属・プラ対応)でOK。これでレバーの先とコマとをくっつけます。


これで修理完了。コマがレバーに連動して浮き上がり、無事いずれの音も鳴るようになりました。
あとはカバーや本体のガワを元に戻し、ネジ留めすれば元通りです。


なお、今回はネジのサイズに合うドライバーをたまたま持っており、しかも接着剤で対応可能でしたが、メロディオンについては公式の修理キットが売っています。
それの使用経験はなく、また、最近のモデルの分解を行ったことがないため、ここまでの手順はとりあえず「1967~73年製のA-32における」仕組みと対処の例となります。

ただ、たぶんこれを解説しているサイトはそうは無いように思われるので、もし同じように「50年愛用しているA-32の音が鳴らなくなったけど分解していいものか解らない」という方がいたら参考にして頂けますと幸いです。

いるかなあ。

なお、鼻笛についてもいずれ、誰かが色々書いてくれるはずです。きっと。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿